2025年の育児介護休業法改正〜育児も介護も、人任せにできなくなった私の話〜

労務・社会保険

正直に言う。

先日、ある社員から育児休業を取得したいという申し出があった。

私は答えられなかった。「A部長代理(給与担当)に確認してみてください」——そう言って、その場をしのいだ。担当者として、だ。

悔しかった。いや、正確には怖かった。次に同じことが起きても、また同じ言葉しか出てこない自分が、はっきりと見えた気がして。


しかも、ふと気づいてしまった。

育児だけじゃない。介護も、まったく同じ状態だ。

A部長代理は今、労務の要を担ってくれている。育休も、介護休業も、複雑な申請も、ぜんぶ最終的にはこの人が処理してきた。でも、あと数年。A部長代理はいなくなる。

そうなったとき、矢面に立つのは私だ。

「A部長代理に聞いてください」は、もう使えない言葉になる。


だから、重い腰を上げることにした。

「労務やるなら知っとかなきゃ、いずれはお前がやるんだぞ」——そう言われ続けながら、目の前の紙の山と効率化に追われて、ずっと後回しにしてきた育児介護休業法を。

まず、全体像を把握するところから始める。


2025年の改正、何が変わったのか

2024年5月に改正された育児介護休業法は、2025年に段階的に施行された。

2025年4月施行分はすでに1年が経過している。2025年10月施行分も、半年以上が経つ。「これから対応する」では遅い話だが、正直なところ私もまだ全容を整理できていなかった。だからこそ、今この記事を書いている。難しい言葉が並ぶ改正だが、ひとつずつ、自分の言葉に置き換えながら見ていきたい。

大きなテーマは3つだ。


①「子どものことで休む」の範囲が、ぐっと広がった

まず、子どもの看護休暇。これまでは「小学校に上がる前まで」だったのが、小学校3年生の終わりまでに延びた。そして名前も「子の看護休暇」から「子の看護休暇」に変わった。この「等」の一文字が、けっこう大事だ。

具体的に、想像してみてほしい。

小学2年生の子を持つ社員から、朝、電話がかかってくる。「すみません、子どもが熱を出してしまって、今日はお休みをいただけますか」。——これまでの制度だと、小学2年生はもう「就学前まで」の枠を超えているので、この看護休暇は使えなかった。有給をあてるか、欠勤にするしかなかった。それが改正後は、小学校3年生の終わりまで対象なので、この社員は堂々と看護等休暇を使える。同じ「子どもが熱を出した」でも、去年と今年で、答えが変わるということだ。

そして「等」がついたことで、休める理由も広がった。子どもの学級閉鎖で、急に家にいることになった日。入園式や卒園式に出る日。こういう「看病ではないけれど、子どものために休みたい」場面も、対象に入った。「看護」だけじゃ収まらない、子育ての現実に合わせて広がったわけだ。だから「看護」じゃ足りなくて、「等」が付いた。そう考えると、あの一文字が急に人間くさく見えてくる。

あわせて、残業を免除してもらえる仕組み(所定外労働の制限)も、小学校に上がる前の子を持つ人まで対象が広がっている。


②「うちの育休、何割が取ってます」を、公表する会社が増えた

次に、育児休業の取得率の公表義務。これは、会社の規模の話だ。これまでは「従業員1,000人超」の大企業だけが、「うちは育休をこれだけ取れています」と外に公表する義務を負っていた。それが、300人超まで広がった。

この手の「人数で線が引かれる義務」は、まず自社が線の内側なのか、外側なのかを確認するところから始まる。うちは該当するのか、しないのか。労務担当として、まっさきに数えるのは、そこだ。該当する規模なら、もう対応が必要な状態になっている。


③会社から「介護、大丈夫?」と声をかける義務ができた

そして、介護。ここが、私がいちばん「まずい」と思ったところだ。

改正で、社員が介護に直面したとき、会社の側から「こういう制度がありますよ」と個別に伝えて、意向を確認することが義務になった。しかも、実際に介護が始まる前——たとえば40歳になったタイミングなどで、早めに情報を届けることも求められている。

育児は、まだいい。妊娠や出産は、本人から申し出があることが多いから、こちらも身構えられる。でも介護は、ある日突然、静かに始まる。しかも本人が「休める制度があるなんて知らなかった」まま、一人で抱え込んで、いつのまにか辞めてしまう——それを防ぐために、会社から先に手を差し伸べなさい、というのが、この改正の芯だ。冒頭で私が「育児だけじゃない、介護も同じだ」と青ざめたのは、まさにここだった。

こうして3つ並べてみると、改正の狙いが、うっすら見えてくる。日本は今、かつてない少子化と、これから本格化する介護の時代に、同時に足を踏み入れている。子育ても、介護も、「個人が仕事を辞めて抱え込む」のではなく、働きながら続けられるように——国をあげて、そういう方向へ舵を切ろうとしているのだと思う。今回の改正は、その大きな流れの、ひとつの表れだ。


施行のタイミングを整理する

混乱しやすいのが「いつから何が変わったのか」だ。3つのテーマは、2段階に分けて施行されている。

2025年4月1日施行済み(約1年が経過)

  • 子の看護等休暇の対象拡大(小学校3年生修了まで、学級閉鎖・入卒園式も対象に)
  • 残業免除の対象拡大(小学校就学前まで)
  • 育児休業取得率の公表義務拡大(300人超)
  • 介護の個別周知・意向確認の義務化
  • 介護休暇の取得要件緩和(勤続6か月未満でも取得可能に)

2025年10月1日施行済み(約7か月が経過)

  • 3歳〜小学校就学前の子を持つ社員への柔軟な働き方措置の義務化(5つの選択肢から2つ以上を選んで講じる)
  • 妊娠・出産申出時と子が3歳になる前の個別意向聴取・配慮の義務化

いずれもすでに施行済みだ。就業規則や育児介護休業規程の見直し、労使協定の確認——まだ手をつけていない会社は、早急に確認が必要な状態にある。

細かい要件や最新の取り扱いは、厚生労働省の特設ページにまとまっている。正確なところは、必ず公式情報を当たってほしい。

育児・介護休業法について(厚生労働省)


正直、給付金まわりはまだ追いきれていない

一度、セミナーに参加したことがある。給付率が何割で、何日目からどう変わって——と説明を受けたが、その場では頭に入りきらなかった。

しかも、制度の名称自体が変わっている。以前の枠組みに「出生後休業支援給付金」などが加わり、給付の範囲も見直された。改正から時間が経った今も、正直、まだ整理しきれていない部分がある。

ここは、見栄を張らずに正直に書いておく。給付金まわりの詳細は、育児編をやる機会があれば、改めて整理する。


次に聞かれたら、今度は自分で答える

「なんとなく知っている」状態と、「自分の口で説明できる」状態の間には、思っているより大きな溝がある。

あの日、育休を聞かれて「A部長代理に確認してください」としか言えなかった私と、社員に「それなら、こういう制度が使えますよ」と答えられる私。その差は、この溝を埋めたかどうかだけだ。施行からすでに時間が経った今、その溝を埋めることが、急務だと感じている。

次に、誰かが不安な顔で相談に来たとき。今度は「A部長代理に聞いてください」とは言わない。まだ完璧じゃない。給付金のことも、追いきれていない。それでも、全体像という地図を手にした分だけ、前より少しは、ちゃんと立っていられる気がする。

育児側・介護側の詳細は、別の記事で改めて整理していく予定だ。引き続き情報を集めながら、いつかもっと具体的な話ができるようにしていきたい。

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