仲の良い友人がMBTI診断にハマっていた。
「やってみなよ」と勧められて、へーそんなのあるんだ、という軽い気持ちで調べてみた。それがきっかけだ。
診断した結果は、ISTJ(管理者型)。信頼される組織の守り手、揺るぎない誠実さで秩序と調和のある日常を築く、とある。
読んだ瞬間、妙に納得した。そして、ふと思った。事務職で働く人間って、外から見たら、どういう人種に見えているんだろう、と。
経理、総務、労務。会社を裏で支えるこの管理部門という部署は、外から見ると、何をしているのかよく分からない。静かで、地味で、何を考えて働いているのかが見えにくい。だから今日は、MBTIの診断結果を手がかりに、「管理部門の人間の頭の中」を、少しだけ開いてみようと思う。これから事務職を目指す人が、この部署の人種を覗く窓になればいい。
先に、結論だけ言っておく。管理部門に向いているかどうかは、性格のタイプでは決まらない。たった一つ、「期限を切られたものを、期限内に終わらせきれるか」——それだけだと、私は思っている。なぜそう思うのか。その答え合わせを、私自身の診断結果を開きながら、していきたい。
診断結果と、答え合わせをしてみる
診断結果に挙げられていた特徴を、自分の実感と照らし合わせていく。当たっているもの、少し違うもの、そして——綺麗な言葉の裏に、別の顔が隠れているもの。それを正直に見ていきたい。
高い信頼性と責任感。これは当てはまる。期日を守ること、ミスをしないこと、約束を果たすこと。それが当たり前だと思って仕事をしてきた。
調和を重んじる現実的な管理能力。これも当てはまる。職場の空気を読みながら、現実的に動く。自分のやり方だと思う。
ここまでは、まあ、そうだろうな、という感じだ。問題は、残りの2つ——安定した実務遂行能力と、自己の判断への自信。この2つには、もう少し説明がいる。診断のラベルだけでは見えてこない、現場の人間の中身が、ここに詰まっているからだ。
「安定した実務遂行能力」の、裏側
安定した実務遂行能力。これも、当てはまる。派手なことは得意じゃないが、地道に積み上げることは苦にならない。淡々と、ミスなく、業務を回していく。たしかに、それは得意なほうだと思う。
でも、正直に言う。この「安定」を支えている原動力は、診断結果が言うような前向きなものばかりではない。
自分を改めて見つめ直して、気づいたことがある。私が淡々と実務をこなせるのは、向上心や使命感だけが理由じゃない。終わらないタスクが、怖いのだ。
片付いていない仕事が手元に残っている。そのことが、どうにも落ち着かない。期限の迫ったものが終わらなかったら、という恐怖。間に合わなかった時の絶望。そこから逃げたい一心で、手が動いている部分が、確かにある。前向きな「やり遂げたい」ではなく、後ろ向きな「終わらせないと、怖い」。その負の感情が、実は私の安定を支える燃料になっている。
これは、決して綺麗な話ではない。でも、管理部門の人間の中には、たぶん、こういう動力で動いている人が少なくないと感じている。締め切りに追われる恐怖を、人より強く感じるからこそ、誰よりも先に手をつけ、確実に終わらせる。その恐怖が、結果として「安定した実務遂行能力」という、立派な看板になっている。裏側は、案外こんなものだ。
「自信」は、押し付けない
もう一つ、診断にあった特徴。自己の判断への自信。これも、確かにある。ただ、その扱い方には、自分なりの流儀がある。「自己の判断への自信を、すぐに外には出さない」ということだ。
たとえば、会議で意見が対立したとする。自分の経験や勘から、「こっちのほうが、絶対にメリットが多い」と、強い確信を持っている場面がある。それでも、私は、その自信をそのまま相手にぶつけることはしない。
まず、相手の意見を、無下にしない。一度、自分の中できちんと検討する。相手の言い分を、自分の考えと並べて、もう一度天秤にかける。そのうえで、なお自分の案のほうがメリットが多いと確信できたら、はじめて相手に伝える。逆に、再検討してみて「相手の意見にも、一理あるな」と思えたら、迷わずそちらを尊重する。
自信はある。でも、それを全面に押し出して、相手をねじ伏せることはしない。一度、自分の理性というフィルターに通す。だから、外に出てくる頃には、もう角が取れている。これが、「自己の判断への自信を、すぐに外には出さない」ということの、本当の意味だと思っている。
管理部門の仕事は、いろんな部署の間に立つことが多い。お金のこと、人のこと、ルールのこと。立場の違う相手と、何度も調整を重ねる。そういう場で、自分の正しさを振りかざす人は、たいてい、うまくいかない。確信を持ちながらも、それを一度引いて、相手の言い分を検討できる。その静かな強さが、この仕事では効いてくる。
ただし、これは調整が必要な場面の話で、トップダウンでプロジェクトを進める場合は、意見を押し通すことも大事になる。自己の判断への自信をどう出していくかの見極めは、状況を見て自分で判断していくしかない。
自己肯定感が、底をつく時がある
ここまで、自信だの安定だのと書いてきたが、正直に言う。
たしかに、普段は上に書いたような自信がある。でも、人間の精神にはどうしても波がある。気分が上がる時もあれば、気分が落ち込む時もある。落ち込む時は、その自信ごと、消える。「自分なんて…」という気持ちに、ずるずると引っ張られる。そういう弱りきった時期は、たぶん、誰にでもある。
私の場合、回復手段はシンプルだ。うまいものを食べて、しっかりお風呂に入って、さっさと寝る。それだけ。栄養剤も、体感としてマジで効く。お酒も煙草もやらないから、そっちには逃げられない。逃げ場がシンプルな分、回復手段も非常にシンプルになった。
ただ、落ち込みの原因が緊急案件やミスの場合は、話が別だ。それを片付けるか、リカバリーの道筋が見えるまでは、不安はなかなか消えない。根本の原因が残っている限り、気分転換だけでは追いつかないからだ。さっき書いた「終わらないタスクが怖い」というのも、結局はここに繋がっている。
こういう波も含めて、管理部門の人間というより、一人の人だ。鋼の心臓を持った特別な人種なんかじゃ決してない。落ち込んで、回復して、また淡々と机に向かう。その繰り返しで、会社の土台を支えている。
結局、どういう人が向いているのか
ここまで自分の中身を開いてきたが、最後に、いちばん知りたいであろう話をする。結局、どういう人が管理部門に向いているのか。
まず、大前提として——管理部門に、こうじゃなきゃいけない、という性格のタイプはない。
私はたまたまISTJだったが、ISTJじゃないと務まらない、なんてことは全くない。性格のタイプは複数あって、明るい人も、無口な人も、慎重な人も、大胆な人も、それぞれにいる。そして、どのタイプにも、その人なりの強みの活かし方がある。事実、私が見てきた管理部門の人たちも、性格はてんでバラバラだった。だから、「自分はこういう性格だから向いてないかも」と、タイプだけで決めつけなくていい。
そのうえで。どんな性格のタイプであっても、これだけは共通している、という一点がある。長く現場にいて、いろんな人を見てきて、私が肌で感じた、たった一つの線。それが、これだ。
期限を切られたものを、期限内に、終わらせきれる人。
管理部門の仕事は、とにかく期限のあるものが多い。給与の支払い、社会保険の手続き、税金の納付、各種の申請。「いつか終わらせる」では、通用しない。決められた日までに、確実に終わらせる。性格が明るかろうが無口だろうが、関係ない。それを当たり前にできる人は、それだけで、この仕事に向いている。
逆に言えば、能力がどれだけ高くても、「締め切りはだいたいでいい」「多少遅れても何とかなる」という感覚の人は、ここでは苦しむかもしれない。仕事のセンスより、この一点のほうが、長く続けられるかどうかを分ける。私がさっき「終わらないタスクが怖い」と書いたのも、裏を返せば、その恐怖があるからこそ、期限を守りきれている、ということなのだと思う。
そう考えると、MBTIの使い方も見えてくる。タイプで向き不向きが決まるわけじゃない。でも、自分を知るきっかけにはなる。もし、自分がこの部署に向いているか分からないなら、気休めにやってみるといい。大事なのは、診断のアルゴリズムを信じることじゃない。結果を見たときに、自分の過去の仕事の「誇り」や「悔しさ」が、どれだけそこに当てはまるか。診断に自分を合わせるんじゃなく、自分の経験のほうに、診断を当ててみる。その答え合わせの時間こそが、自分の輪郭を、いちばんはっきりさせてくれる。
外から見えにくい、管理部門の人間の中身。少しは、伝わっただろうか。
「総務・労務・経理で悩むあなたに、現場から届けます。」
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