未経験から事務職になりたいあなたへ〜経理・総務・労務を目指す、その前に〜

キャリア・転職

正直に言う。

昔、事務職未経験の友人に「事務職って、どうやったらなれるの?」と聞かれたことがある。

その時の私は、正直、うまく答えられなかった。私はもともと数字に触れるのが好きで、昔から数字がぴたりと合う瞬間がたまらないと感じていた。だから経理を目指して、経理になった。「なりたいものに、なった」。それ以上の説明が、出てこなかったのだ。

でも、あれから経験を積んで、採用する側にも立った今なら、もう少しまともに答えられる気がする。

事務職は、人気の仕事だ。求人に対して応募が多く、狭き門だと言われる。実際、採用に関わっていても、その人気は肌で感じる。だからこそ、どうすれば事務職になれるのか——現役で管理部門にいて、採用も見てきた私の目線で、語ってみたいと思う。

その前に、一つ整理しておきたい。ひとくちに「事務職」と言っても、その中身は幅広い。会社を裏で支える仕事は、まとめて「管理部門」と呼ばれることが多く、経理や人事、総務はもちろん、大きな会社になると法務や広報、経営企画といった仕事まで含まれる。

その中でも、未経験からでも目指しやすく、そして私自身が歩いてきたのが、経理・総務・労務だ。だから今日の話は、主にこのあたりを念頭に置いている。

まず、最初に一つだけ確認してほしいことがある。

プライドの話をしよう

営業の人から、冗談っぽくこう言われたことがある。

「こっちは外回りで疲れてるのに、お前らはクーラーの効いた部屋でぬくぬくやってるよな」「早く帰れていいよな」「お前ら、暇そうだよな」

その人も、外回りで忙しくて、少し苛立っていたタイミングだったと思う。普段は一緒に笑い合う仲だし、気心も知れている。だから、完全な悪意があったわけではない。ただの軽口だ。それは分かっている。それでも、私の心には、チクリと痛むものがあった。

これは、たぶん、どこの会社にもついて回る話だ。外で稼いでくる仕事と、中で支える仕事。その構造がある限り、こういうすれ違いは、どうしても生まれる。誰が悪いわけでもない。だからこそ、管理部門をそういう目で見る人が一定数いるのも、事実として受け止めている。

そのうえで、自分の心に問いかけてほしい。それでもなお、裏から皆を支えたいと思えるか、と。

「楽そうだから」「のんびりできて、何もしなくていいから」——そんな感覚を持ったまま入ってきた人が、長続きするのを、私は見たことがない。

支えることに誇りを持てるか。これが、最初の関門だ。

「暇そうな部署」というイメージについて

管理部門に向いている人というと、真面目で寡黙、黙々と書類に向き合うタイプを想像するかもしれない。暇そう、という印象を持つ人もいるだろう。

先に言っておくと、暇ではない。

書類を処理して、数字を確認して、期限を管理する。社員からの問い合わせに答え、取引先と対応し、役所へ申請する。表からは動きが見えにくいだけで、手元は常に何かが動いている。静かに見えて、暇とは程遠い。

私自身は、黙々と作業を進めるのが苦にならないタイプだ。だから、気がつけば今日、誰とも喋っていない、という日があっても、それほど苦じゃない。むしろ落ち着く方かもしれない。

でも、だからといって、ずっと黙っていられる仕事かというと、それは違う。さっきの問い合わせ対応も、取引先とのやり取りも、役所への申請も、相手のいる仕事だ。丁寧なやり取りが求められる、対人能力もちゃんと要る。喋る機会は、決して少なくない。

つまり、要はバランスなのだ。黙々と作業に集中する時間と、人と丁寧にやり取りする時間。そのどちらも、この仕事にはある。「黙々タイプじゃないと無理」でもないし、「喋るのが得意じゃないと務まらない」でもない。自分の中で、その両方に折り合いをつけられるかどうか。そこが効いてくる気がする。

事務職といっても、いろいろある

向き不向きが見えてきたら、次は方向の話だ。

ひとくちに事務職といっても、その中身はけっこう違う。同じ管理部門でも、労務・総務・経理では、見ている景色がまるで別ものだ。私はその全部を通ってきたから、よけいにそう思う。三つが何をどう違うのかは、別の記事で料理屋に例えて整理してみた。自分がどれに近そうか、まずはここで当たりをつけてみてほしい。

そのうえで、気になる職種があれば、もう少し踏み込んだ話もしている。社員の生活を預かる労務のこと、何でも屋として走り回る総務のこと、お金と締め切りに追われる経理のこと。どれも、きれいごとじゃなく、現場の本音で書いたつもりだ。


スキルと資格の話

進みたい方向が見えてきたら、スキルの話だ。

経理を目指すなら、簿記3級は持っておいた方がいい。なくても仕事はできるが、数字の流れを学んでから業務に入るのと、何も知らずに入るのとでは、最初の苦労が全然違う。商品知識ゼロで商談に行くようなものだ。

事務全般を目指すなら、エクセルとワードは最低限使えることが前提だ。ここはスタートラインの話で、できて当然という扱いになる。

ただ、総務・庶務的な業務であれば、未経験からでも入ることはできる。私自身、経理からスタートして、今は労務・総務・何でも屋として動いている。スキルより先に、心の準備の方が大事だと思っている。

簿記やMOSのほかにも、管理部門で持っておくと有利な資格は、まとめて別の記事に並べてある。それぞれを取るべきかどうか、現役担当者としての正直な温度感で書いたので、あわせて覗いてみてほしい。

採用側が見ているもの

採用に関わった経験から、正直に言う。

回答が前向きかどうか、これだけで印象がかなり変わる。明るくなくていい。ただ、受け身な空気が漂う人は、一緒に働くイメージが湧きにくい。

管理部門は、誰かに感謝されることが少ない仕事だ。やって当たり前、ミスをしたら怒られる。そういう環境で、自分から前を向いて動ける人かどうか。採用側はそこを見ている。

最後に

色々偉そうなことを言ったが、私も人だ。聖人ではない。凹むこともあるし、言い返したい時も、もしかして向いてないかも、と落ち込むこともある。しかし、これだけは言える。あなたの培った人生経験は、管理部門でも活きる。交渉力、段取り力、人と話す経験。無駄になるものは何もない。

ただ、支えることに誇りを持てるか。それだけが、最初の問いだ。

そうそう、一つ言い忘れていた。

私は採用する側にも立っている関係上、事務職を目指す人に役立つ転職サイトを、いくつか知っている。どこが信頼できて、どこが事務職に強いのか。そのあたりも、いずれ紹介する機会があると思う。今日は、まず「支えることに誇りを持てるか」——その入り口の話だけ、置いておく。

「総務・労務・経理で悩むあなたに、現場から届けます。」

次はこの話をする
事務職の面接で落ちる人〜採用する側に立って、初めて見えた現実〜

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