正直に言う。
書類の整理をしていると、ときどき、紙から「匂い」がすることがある。
履歴書や、入社時の書類。たくさんの紙を扱っていると、それぞれに、ほのかな匂いが残っていることに気づく。今日は、ちょっと不思議な、でも私には妙に印象深い、その話をする。
紙には、匂いが残る
香水の匂いがする書類がある。ほのかに甘い、その人が普段つけているのだろう香り。たばこの匂いがするものもある。書いた場所が、目に浮かぶ。
そして、一番強烈に記憶に残っているのが——線香の匂いだった。
その書類を手に取った瞬間、ふわりと立ちのぼった、あの独特の香り。私の頭の中には、一瞬で、ある情景が広がった。畳の敷かれた和室。昔ながらの、瓦葺きの屋根。部屋の一角には、仏壇があって、線香がくゆっている。きっと、その人は、そういう家で、この書類を書いたのだろう。
会ったこともない、まだ顔も知らない人の暮らしが、一枚の紙の匂いから、ありありと目の前に浮かんできた。紙には、その人の生活が、こうして静かに宿るのだ。
整え方にも、人が出る
匂いだけではない。書類の「整え方」にも、その人が表れる。
一文字ずつ、丁寧に手書きされたもの。きっちり印刷されたもの。写真がまっすぐ、きれいに貼られたもの。そして——正直に言えば、写真の貼り方が、お世辞にもきれいとは言えないものもある。少し斜めだったり、雑に貼られていたり。
こういう書類を見ると、つい「もう少し丁寧に整えれば、印象が違うのにな」と思ってしまう。書類は、その人の第一印象を作る。だから、整っているに越したことはない——と、私もそう考えていた。
でも、ふと気づいた
ここで、大事なことに気づく。
今、私が手にしているこれは、応募してきた人の書類ではない。すでに入社が決まった、社員の書類なのだ。
つまり——写真の貼り方が少し雑でも、この人は、ちゃんと採用されたということだ。書類の体裁だけで、ふるい落とされたりはしなかった。面接で会って、話して、その人の中身を見て、迎え入れられた。
実際、その人とは、入社の手続きの時に、私も少し話をした。気さくで、面白い人だった。書類の印象だけで勝手に想像していた人物像が、会ってみると、まるで違って、ずっと魅力的だった。
書類は、その人の入り口にすぎない。そこに表れるのは、その人のほんの一面だ。整っているかどうかと、その人が一緒に働く仲間としてどうかは、まったく別の話なのだ。書類の体裁だけで人を決めつけていたら、こんな素敵な人を、見落としていたかもしれない。そう思うと、少しひやりとした。
それでも、最後に一つだけ
書類の向こうには、必ず、生身の人がいる。線香の匂いのする家で暮らす人がいて、それぞれの生活がある。整え方の上手い下手だけで、その人の価値は、決して測れない。これは、たくさんの書類と、その向こうの人たちに会ってきて、私が心から思うことだ。
——と、いい話風にまとめておいて、最後に、ひとつだけ本音を言わせてほしい。
中身で人を見る。それは、その通りだ。でも、これは採用とはまったく関係ない、私の、ごく個人的なお願いとして聞いてほしい。
書類は、やっぱり、ちょっとだけ整えてくれると、嬉しい。受け取る側の人間も、その一枚の向こうに、あなたを見ているから。
「総務・労務・経理で悩むあなたに、現場から届けます。」
次はこの話をする
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