正直に言う。
私は最近まで、AIというものを使っていなかった。
世間では「AI、AI」と騒がしい。ニュースを見ても、SNSを見ても、その話ばかり。でも、自分には関係ない話だと思っていた。
新しいものには、まず慎重になる。それが管理部門の性分だ。便利だと飛びついて、後で痛い目を見るのは避けたい。だから、見極めてからでないと動かない。
そんな私が、なぜAIを使うことになったのか。今日はその話をする。
きっかけは、ある備品の助成金だった
ある日、社内で使う備品の導入を検討することになった。健康管理に関わる機器で、調べてみると、どうやら助成金が使えるらしい。
ここで、私は固まった。
助成金。言葉は知っている。でも、どの制度が使えるのか、条件は何か、申請にはどんな書類がいるのか、そもそも対象になる機器はどれなのか——何ひとつ、わからない。
こういう時、いつもなら役所のサイトを片っ端から開き、PDFを読み込み、要綱とにらめっこして、何日もかけて少しずつ理解していく。管理部門の仕事は、こういう「誰も教えてくれない調べもの」の連続だ。
でも、その日はふと思った。
これ、AIに聞いたらどうなるんだろう。
いくつか調べて、試しに使ってみた
とはいえ、AIといっても何があるのか知らない。まずは、それを調べるところからだった。
調べてみると、いろいろあるらしい。ChatGPT、Gemini、Claude、Copilot——名前は聞いたことがあるような、ないような。正直、それぞれの違いはよくわからなかった。
なお、今回どれを使ったかは、あえて割愛する。というのも、私自身まだ色々と試している段階で、本当におすすめできるかどうか、自信を持って言えないからだ。きちんとご紹介できる時が来たら、その時に改めてお伝えしようと思う。
ともかく、その中のひとつを、半信半疑で使ってみた。
どういう制度があるのか。どういう条件で、何が対象になるのか。何から手をつければいいのか。質問を重ねていくうちに、頭の中でバラバラだった情報が、少しずつ筋道になって見えてきた。
制度の仕組みから、対象になりそうな機器の選び方まで、道筋が一気に見えた。
もちろん、AIの言うことを鵜呑みにはしない。最終的には自分で公式の情報を確認した。でも、「どこを確認すればいいか」の当たりがついているのと、ゼロから手探りで始めるのとでは、かかる時間がまるで違う。
そして、その整理した内容を持って、総務のことに詳しいB部長代理に話をつなぐことができた。
一人で抱え込んで何日も唸っているはずだった案件が、その日のうちに終わった。具体的な成果という形で、前に進んだ。
正直、驚いた。
そして、確かな可能性を感じた。これは、管理部門の仕事を変えるかもしれない、と。
じゃあ、AIは管理部門の仕事を奪うのか
ここで、誰もが一度は考える問いにぶつかる。
こんなに便利なら、いずれ管理部門の仕事は、AIに奪われるのではないか。
正直に言う。その不安は、わからなくもない。実際に使ってみて、「これは下手な人間より早いし、正確な部分もある」と感じた場面もあった。
でも、今の段階を冷静に見ると、少し違うことが見えてくる。
今のAIは、ようやく世間に広く使われ始めた段階だ。私のように「流行っているから試してみた」という人が増えてきたところで、特に中小企業の現場では、まだほとんど使われていないのが実態だと思う。私自身、つい最近まで使っていなかったのだから。
これは、スマートフォンが世に出たときと似ている気がする。最初は一部の人が持っているだけだった。でも気がつけば、今は一人一台が当たり前だ。AIも、そういう時代が必ず来る。私はそう確信している。
だからこそ、今のうちに考えておきたい。AIと、どう付き合っていくのか。
管理部門でAIを使うなら、絶対に外せないこと
便利だと感じた一方で、管理部門の人間として、どうしても言っておきたいことがある。
個人情報の取り扱いだ。
管理部門は、給与の情報、マイナンバー、人事の評価、家族構成——会社の中でも、とびきり機微な情報を扱っている。AIが便利だからといって、こうした情報を不用意に入力するのは、絶対にやってはいけない。
入力した情報がどう扱われるのか。学習に使われないか。社内で使っていいツールなのか。ここを確認せずに使い始めるのは、管理部門の人間としては失格だと思う。便利さの裏側には、必ず気をつけるべきことがある。
私が助成金を調べたときも、具体的な社員の情報や、社外に出してはいけない数字は、一切入力していない。あくまで「制度はどうなっているか」「一般的にどう進めるか」を聞いただけだ。ここの線引きは、最初に決めておかなければならない。
結局、人間がやらなければならないこと
使ってみて、はっきりわかったことがある。
AIは、全部を代わりにやってはくれない。
まず、何を調べたいのか、何を解決したいのか——最初の指示は、人間が出さなければならない。AIは、こちらが問いを立てて初めて動く。問いの立て方が悪ければ、返ってくる答えもぼやける。
そして、どう進めるかの方針を決めるのも、人間だ。AIはいくつもの選択肢を出してくれるが、「うちの会社で、どれが現実的か」を判断できるのは、現場を知っている人間だけだ。
最後に、合っているかどうかの確認も、人間がやる。これが一番大事だ。
管理部門の仕事は、間違いが許されない場面が多い。入社の手続き一つを取っても、書類を集め、内容を確認し、期限内に提出する。その一つひとつで、人がアクションを起こし、間違いがないかを目視で確認する必要が、どうしても出てくる。AIに「これで合ってる?」と聞いて、その答えを最終的に信じるかどうかを決めるのも、結局は人間なのだ。
私はこの管理部門にいて、すべてをAIに代替することは不可能だと感じている。少なくとも、今は。
共存こそが、答えだと思う
AIは、人間の仕事を奪う敵ではない。
少なくとも今は、面倒な調べものを肩代わりしてくれて、私が本当にやるべき判断や確認に集中させてくれる、頼れる相棒だ。何日もかかっていた調べものが数時間で形になれば、その分、別の仕事に手が回る。これは、人手の足りない管理部門にとって、大きい。
AIが得意なことは、AIに任せる。人間にしかできないことは、人間がやる。お互いの得意を持ち寄って、win-winの関係でいられるなら、それでいい。
スマートフォンがそうだったように、AIも、いずれ当たり前の道具になる。その時、「使えない」と身構えるのではなく、「うまく付き合える」人でありたい。
新しいものには慎重な、管理部門の人間の私が言うのだから、間違いない。まずは、試してみるところからでいい。
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