一枚のカードに、和暦と西暦が同居している〜変換に苦しむ私と、即答するB部長代理〜

現場のあれこれ

正直に言う。先日、マイナンバーカードを見ていて、妙なことに気づいた。

社員登録のために、あるカードを確認していた時のことだ。生年月日の欄には「昭和××年◯月◯日生」とある。和暦だ。その下の有効期限には「20××年◯月◯日まで有効」とある。——西暦だ。

一枚のカードの中に、和暦と西暦が、同居している。

さらに、別の機会に外国籍の方のカードを確認した時は、生年月日も有効期限も、両方とも西暦で書かれていた。同じマイナンバーカードなのに、だ。つまり、システムとしては西暦で動けるのに、日本人向けの生年月日は、和暦で出てくる。

国が発行する、たった一枚のカードの中ですら、和暦と西暦は、こうして入り混じっている。


そして、必ず「変換」が入る

これが、管理部門の実務に、地味に効いてくる。

うちの給与システムの社員登録は、日付を和暦で入れる仕様になっている(設定で変えられるのかもしれないが、いずれにせよ、どちらか一方だ)。ところが、手元に届く書類の日付は、和暦だったり、西暦だったり。生年月日、学歴、職歴、資格の取得年月日——一人分を登録するだけで、昭和、平成、令和、そして西暦の間を、何度も行ったり来たりする。

カードは併記、書類はバラバラ、システムは片方だけ。その段差を埋めるのは、結局、人間だ。つまり——必ず、どこかで「変換」が入る

令和3年。昭和40年。平成21年。

——これ、ぱっと西暦に変換できるだろうか。私は、できない。何やら計算する方法もあるらしいが、毎回そこで脳が止まる。そして、諦めて、和暦を西暦に変換する早見表を探す。この和暦と西暦のハーモニーは、ありとあらゆる書類に、地味に、しかし確実に影響してくるのだ。


コーヒーを一口飲んで、ふと思い出した

早見表を探す手を止めて、コーヒーを一口飲んだ。ふう、と肩の力が抜ける。

——そういえば。

B部長代理は、これを、全部即答していたな。

総務一筋のB部長代理は、和暦と西暦の変換に、まったく詰まらない人だった。「昭和40年って、西暦だと何年でしたっけ」と私が聞けば、書類から目も上げずに「1965年」と返ってくる。平成21年は? 令和3年は? 何を振っても、よどみない。


B部長代理に教わった、和暦・西暦の覚え方

一度、コツを聞いてみたことがある。B部長代理は、こともなげに言った。「昭和は、25を足せば西暦の下二桁だ。昭和40年なら、40足す25で65、つまり1965年。平成は、年に88を足す。令和は、18を足せばいい」

言われたことを、表にすると、こういうことらしい。

元号変換のしかた
昭和+25 →下二桁が西暦昭和40年+25=65 → 1965年
平成+88(下二桁)平成21年+88=109 →(19)09 → 2009年
令和+18(下二桁)令和3年+18=21 → 2021年

なるほど、と思った。思ったのだが——私の頭では、その足し算自体が、とっさに走らない。「昭和40年、40足す25は……ええと」とやっているうちに、もう早見表を開いたほうが早い、となってしまう。

でもB部長代理は、その足し算が、息をするように一瞬で終わる。いや、もはや足し算ですらないのかもしれない。長年、数えきれないほどの書類で、和暦と西暦を行き来してきた人だ。元号と西暦が、頭の中で、最初から地続きになっているのだろう。

正直、地味に、震える。あれは、年季だ。一朝一夕でたどり着ける場所ではない。私には、まだ遠い領域だなぁ……。


コーヒーは、少しぬるくなっていた

——と、そこまで思い出して、コーヒーをもう一口。

少し、ぬるくなっていた。それだけの時間、ぼんやり昔を思い出していたらしい。

いや。憧れていても、目の前の書類は、全く進まない。そして、私はB部長代理ではない。今すぐにあの境地へは、行けない。

「……早見表、どこにやったっけ」


表を引くことを、恥じなくていい

考えてみれば、国のカードですら和暦と西暦が同居しているのだ。現場の書類が入り混じるのも、当然といえば当然で、この変換という仕事は、たぶん、当分なくならない。

私は、B部長代理の頭の中にある早見表には、きっと、しばらくかなわない。

でも、私には、紙の早見表がある。スマホで調べる手もある。さっきの表を、ブックマークしておく手もある。それで、いい。表を引くことを、恥じる必要はない。大事なのは、正しい西暦を、正しく書類に書くことであって、暗算の速さを競うことではないのだから。

いつかは、B部長代理みたいに、ぱっと変換できるようになるんだろうか。なれたら、ちょっと格好いい。でも、ならなくても、たぶん大丈夫。憧れは憧れのまま、コーヒーを片手に、私は今日も一つずつ、表を引いて、変換していく。

それにしても——令和も、もう何年も経つ。そろそろ令和の変換くらいは、覚えてもいい頃かもしれない。18を、足す。18を、足す……。

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