「妻が退職するんです」外国籍の配偶者を扶養に入れた話〜資格確認書という近道〜

労務・社会保険

正直に言う。前回の続きだ。

以前、「結婚するんです」と社員が来た話を書いた。お相手は外国の方で、私は冷や汗をかきながら手続きを調べた、あの一件だ。そして、その社員は、結婚の相談のときに、もう次のことまで口にしていた。

「妻は、そのうち退職する予定なんです。そうなったら、保険はどうなりますか」

用意周到なこの社員の、第二の宿題。今日は、その話をする。


まず、いちばん最初に聞いたこと

妻が退職して、夫(社員)の扶養に入る。よくある手続きだ。でも、調べていくうちに、いちばん最初に確認すべきことが、一つあるとわかった。

それは、退職後に失業給付(雇用保険の基本手当)を受け取る予定があるか、ということだ。

なぜ、これがそんなに大事なのか。実は、失業給付は「収入」として扱われる。そして、扶養に入るには、収入の見込みが一定の基準より下でなければならない。だから、失業給付をそれなりの額で受け取っている期間は、扶養に入れないことがある。受け取り終わってから、あらためて扶養に入る、という順番になる。

もし、これを知らずに先に扶養へ入れてしまうと、後で「給付が始まったので、いったん外してください」となる。二度手間だ。だから、最初に聞く。

社員に確認してもらったところ、奥様は、失業給付を受け取る予定はない、とのことだった。

それなら、話は早い。退職して、今後の収入の見込みが基準より下なら、そのまま扶養に入れる。最初の関門は、するりと抜けた。


マイナ保険証で、進めようとした

さて、ここからが本番だ。

今は、健康保険証が、マイナンバーカードと一体になった「マイナ保険証」へと移り変わっている時期だ。だから私は、当然のように、奥様もマイナ保険証で手続きを進めるものだと思っていた。新しく扶養に入るなら、これからの形に合わせるのが筋だろう、と。

そう思って、必要な段取りを並べはじめた。ところが、これが、思ったより手間がかかりそうだった。お相手は外国の方だ。マイナンバーカードそのものの準備から見ていくと、揃えるものも、踏む段階も、ぐっと増える。

うーん、と唸っていた私を見て、A部長代理(給与担当)が、ひょいと口を挟んできた。


「それ、資格確認書のほうが早いぞ」

「凪、それ、マイナでやろうとしてるのか。資格確認書のほうが、早いぞ」

資格確認書。マイナ保険証を使わない人に向けて交付される、保険証の代わりになる書類だ。黄色い、あれである。

健康保険資格確認書交付申請書

言われて、はっとした。たしかに、そうだ。マイナンバーカードの段取りから始めると時間がかかるが、資格確認書なら、カードの準備を待たずに、まず「保険が使える状態」を先に作れる。必要な書類も、こちらのほうが少なくて済む。急ぐなら、断然こっちだ。

私は、つい「新しい制度に合わせなければ」と、難しいほうの道に自分から入り込んでいた。A部長代理は、紙とFAXを信奉する、私がいつもDXのことでやきもきさせられる相手だ。でも、こと「どの手続きが現場で早いか」という勘所にかけては、長年の経験が、ぴたりと急所を突いてくる。

制度は、新しいほうが正しいとは限らない。目の前の人を、いちばん早く、確実に困りごとから救える道はどれか。それを選ぶのが、現場の仕事だ。ベテランの一言に、また一つ、学ばされた。


外国籍の配偶者、もう一つ見るところ

方針が決まれば、あとは書類を揃えていく。ただ、今回はお相手が外国の方だ。日本人同士の場合に加えて、確認することがいくつかあった。

扶養に入る人は、日本国内に住所(住民票)があること。これが条件になっている。今回は、夫婦で日本に暮らしていて、住民票もあるので、ここは問題ない。

あとは、夫婦であることが確認できるもの、退職して収入がなくなることがわかるもの、そして在留カードなど。日本人の配偶者なら戸籍で済むところを、外国籍の方は、少し別の書類で見ていくことになる。

このあたりの「どの書類を、どう揃えるか」という細かい話は、書き出すと、それだけで長くなる。実際、私もずいぶん調べて、ようやく腑に落ちた。だから、手続きの細部については、別に補足編としてまとめることにした。同じように困っている人は、そちらも見てほしい。


人の生活に関わることだから

この手の手続きは、人の保険や、お金や、生活に、まっすぐ関わる。だから、いい加減なことは書けないし、言えない。

この記事も、私が一つの案件を通して調べた範囲の話だ。制度は変わることもあるし、加入している健康保険(協会けんぽか、健康保険組合か)や、一人ひとりの状況によって、扱いが違う部分も多い。だから、実際に手続きをする方は、必ず、加入している健康保険の窓口や、公式の情報で確認してほしい。ここでも、声を大にして言っておく。

正確な制度や手続きは、公式の案内が確実だ。

全国健康保険協会(協会けんぽ)
日本年金機構

結婚、そして退職。人生の節目が、こうして次々と「手続き」になって、私の窓口にやってくる。冷や汗をかきながらも、その一つひとつの向こうに、二人の暮らしがあると思えば、悪くない仕事だ。

さて。あの用意周到な社員が、次に何を聞いてくるのか。……いや、もう何も言うまい。末永く、お幸せに。

「総務・労務・経理で悩むあなたに、現場から届けます。」

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