外国籍の配偶者を扶養に入れる手続き〜被扶養者異動届でつまずいた6つのこと〜

労務・社会保険

正直に言う。今日は、実際にあった手続きの「裏側」を話す。

前に、外国の方と結婚した社員の、奥様を扶養に入れた話を書いた。あのとき表では書かなかった、私が実際にどこでつまずいて、どこで「うわ、そうなのか」と声が出たか。その順番で話していく。たぶん、同じことをする人は、同じところでつまずくはずだから。


最初に、これだけは言わせて

本題の前に、ひとつだけ。

私は精一杯調べた。でも専門家じゃないし、制度は変わる。会社の入っている保険や、その人の事情で、話も変わってくる。だからこの記事は「地図」だと思って読んでほしい。数字を出すところには、すぐ隣に公式のリンクを置いておくから、本番は必ずそっちで確かめて。人の保険と生活がかかっている。ここだけは、しっかり言っておく。


つまずきポイント①「とりあえず扶養に入れよう」が、危ない

奥様が退職する。じゃあ扶養に入れよう。——私も最初、そう思った。でも、ここに最初の落とし穴がある。

失業給付だ。退職したら、ハローワークで失業給付をもらう人は多い。で、これがクセモノで——失業給付は「収入」に数えられる。本人にとっては「無職でお金がない」状態なのに、制度の上では「収入がある人」とみなされる。この感覚のズレが、事故のもとになる。

具体的には、基本手当が日額3,612円以上もらえる期間は、扶養に入れない。知らずに先に入れてしまうと、後から「給付が始まったので外してください」と二度手間になる。だから順番としては、まず「失業給付、もらう予定ある?」と聞く。これが最初の一手だ。もらわない、あるいはもらい終わったなら、扶養に入れる。

ちなみに収入の基準そのものは、年間の見込みで130万円未満(60歳以上や障害のある方は180万円未満)が目安とされている。過去にいくら稼いだかではなく、これから先の見込み、というのがポイントだ。

(この日額や収入の基準は、必ず公式で最新を確認してほしい)
被扶養者に異動があったときの手続き(日本年金機構)


つまずきポイント②「協会けんぽに出せばいい」と思ったら、違った

次につまずいたのが、出す先だ。

協会けんぽの健康保険なんだから、書類は協会けんぽに送るんだろう。——そう思い込んでいたら、違った。扶養の届出(被扶養者異動届)は、社員本人が会社を経由して、日本年金機構へ出す。協会けんぽに直接ではない。ここ、地味だけど間違えやすいので、声を大にして言っておく。

提出先は事務センターか、管轄の年金事務所。期限は、事実が発生してから5日以内とされている。使う紙は「健康保険 被扶養者(異動)届 国民年金第3号被保険者関係届」という、長い名前の一枚。健康保険の扶養と、年金の第3号の手続きが、これ一枚でまとめてできるようになっている。よくできている。

被扶養者に異動があったときの手続き(日本年金機構)


つまずきポイント③「課税証明書、要るの?要らないの?」

添付書類は、大きく二種類。「夫婦であること」を示すものと、「収入」を示すものだ。

夫婦であることは、戸籍謄(抄)本か住民票の写し(発行から90日以内のもの)。ただし、社員本人と配偶者、双方のマイナンバーを届書に書いて、会社が続柄を確認した旨を記せば、この書類は省ける、とされている。マイナンバーをきちんと書けば、紙が一枚減る。

で、私が一番モヤッとしたのが、収入のほうだ。「課税証明書って要るの?」と。結論から言うと、退職してすぐ、失業給付ももらわないケースなら、退職証明書か離職票の写しで収入要件を示せる。課税証明書は、他に収入があるような場合を除けば、原則として必須ではない。「念のため」と社員に取ってきてもらったら、結局使わなかった——なんてことにもなりかねないので、まずは退職証明書や離職票で足りるか、確認するのがいい。

(状況によって出すものが変わるので、自分のケースは必ず公式で)
被扶養者に異動があったときの手続き(日本年金機構)


つまずきポイント④ ここからが外国籍ならでは——「日本に住んでいるか」

ここまでは、日本人の配偶者でもだいたい同じだ。外国籍の配偶者だと、もう一つ見るところがある。

令和2年4月から、扶養に入る人には「日本国内に住所がある(住民票がある)こと」という要件が加わった。だから、配偶者が日本で一緒に暮らしていて、在留カードに基づく住民登録があれば、ここはクリアになる。一緒に日本に住んでいるなら、基本は問題ない。

ただ、一つ注意。住民票があっても、在留資格が「特定活動(医療目的)」「特定活動(長期観光)」といった一部のものだと、扶養に入れない、と公式に書かれている。「日本人の配偶者等」などの資格で住民登録があれば、この居住要件は満たす。自分のケースが当てはまるか不安なら、ここは年金事務所に確認したほうがいい。

従業員の家族が海外居住の場合の手続き(日本年金機構)


つまずきポイント⑤ 危うく忘れる「ローマ字氏名届」

これは、危うく見落とすところだった。

外国籍の配偶者を年金の第3号にする場合は、扶養の届書と一緒に「国民年金第3号被保険者ローマ字氏名届」というものを出すよう、年金機構が案内している。名前をローマ字で正しく登録するための届出だ。メインの届書に気を取られていると、ついこれを忘れて、後でつかえる。電子申請なら、PDFや画像で添付すればいい。

ついでに言うと、名前やフリガナの書き方は、住民票やマイナンバーの登録に揃えるのが確実だ。自己流で読みを当てると、登録と食い違って差し戻される。迷ったら、年金事務所に「この表記でいいですか」と一本聞くのが、結局いちばん早い。


つまずきポイント⑥「保険証、今すぐ要るんですけど」

最後は、保険証だ。今は、健康保険証がマイナ保険証へと移り変わっている時期で、新しく扶養に入る人の「保険が使える状態」を、どう作るかが悩みどころになる。

ここで知っておきたいのが、資格確認書だ。協会けんぽの案内によると、扶養の届出(被扶養者異動届)の「資格確認書発行要否欄」にチェックを入れれば、発行を求められる。マイナンバーカードの準備から始めるより、こちらのほうが早く「保険が使える状態」を作れる場合がある。実際、私の現場でも、この資格確認書のルートのほうが早い、という判断になった。

ただし、発行までには日本年金機構から協会けんぽへ情報が連携されてから30〜50日ほどかかる、とされている。「今すぐ病院にかかりたい」という場合は、この日数を見越して、早めに動くのがいい。急ぐなら、別途「資格確認書交付申請書」で申請する方法もある。

(マイナ保険証への移行で今まさに動いている部分なので、最新は必ず公式で)
マイナ保険証・資格確認書について(協会けんぽ)


並べてみると、一本道。でも

こうして並べると、失業給付を確認して、年金機構に届けて、書類を添えて、住んでいるかを見て、ローマ字氏名届を出して、保険証の代わりを決める。書くと一本道だ。でも実際は、一つひとつで「あれ、これどうだっけ」と立ち止まる。私も、立ち止まりっぱなしだった。

もう一度だけ言う。ここに書いたのは、私が調べて、つまずいて、なんとか通した「地図」だ。数字や要件は、添えた公式リンクで必ず裏を取ってほしい。迷ったら、年金事務所や会社の窓口へ。人の保険と生活に関わることだから、慎重すぎるくらいでちょうどいい。

そして——もし「この先、もし離婚することになったら、この扶養はどうなるんだろう」と気になった人もいるかもしれない。その「出口」の話は、別にまとめた。気が向いたら、そちらも読んでみてほしい。

「総務・労務・経理で悩むあなたに、現場から届けます。」

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