外国籍の相手と結婚する社員から相談が来た〜国際結婚の手続きと、婚姻要件具備証明書〜

労務・社会保険

正直に言う。その日、私は心底驚いた。

ある男性社員が、私のところに来て、こう言った。

「結婚するんです。手続きをお願いします」

おめでとうございます。まずは、心からの祝福だ。管理部門をやっていると、こういう人生の節目が、ある日ふいに「手続き」という顔をして、やってくる。私は嬉しくなって、詳しく話を聞いた。

聞けば、お相手は、外国の方だという。


どこで出会ったんですか

つい、聞いてしまった。どこで出会ったんですか、と。

マッチングアプリです、と返ってきた。

そうか……! そういうルートも、あるのか……! 内心、ひとり静かに感心していた。何度か会ううちに仲良くなって、あれよあれよという間に、ゴールまで行ったらしい。ご両親にもちゃんと紹介して、祝福してもらったという。いい話だ。聞いているこっちまで、あたたかい気持ちになる。

と、しみじみしていられたのは、ここまでだった。


実務担当としては、冷や汗が出る

祝福の気持ちとは別に、手続きをする立場としては、じわりと冷や汗がにじんでいた。

なんせ、お相手が外国の方だ。

日本人同士の結婚なら、私もある程度は勝手がわかる。婚姻届を出して、受理されて、めでたしめでたし。でも、お相手が外国籍となると、何が同じで、何が違うのか。それが、その場ではすぐに答えられなかった。

こういう時、いい加減なことは、口が裂けても言えない。人の人生の、大事な手続きだ。生半可な知識で「たぶん大丈夫です」と言うのが、いちばん危ない。

だから、正直に言った。「しっかり確認して、あらためてご案内します」と。そして、いつものように、調べものが始まった。


調べて、わかってきたこと

調べていくと、どうやら大きく二つの山があるらしい、ということが見えてきた。

一つめは、結婚そのものの届け出。市区町村の窓口に婚姻届を出すところまでは、日本人同士と同じだ。ただ、外国の方の場合、もう一つ要るものがあった。お相手の母国が「この人は、自分の国の法律上、ちゃんと結婚できる状態ですよ」と証明する書類だ。独身であることや、結婚できる年齢に達していること。それを母国の公的機関が証明する、という考え方らしい。

そして——ここがいちばん、私を唸らせた。この証明書、国によって、出方がまるで違うのだという。すんなり発行してくれる国もあれば、そもそもそういう制度がない国もある。その場合は、また別の書類で代えることになる。つまり、「お相手がどこの国の人か」で、揃えるものの道筋が、まるっきり変わってしまうのだ。

二つめの山は、結婚した後の話。これが、調べてみて、いちばん「なるほど」と思ったところだ。

婚姻届が受理されて、夫婦になった。めでたい。でも、それで在留資格——その人が日本にいられる立場——が、自動的に切り替わるわけではないのだ。結婚は結婚、在留資格は在留資格。窓口も別なら、手続きも別。「結婚したんだから、あとは大丈夫でしょう」とはならない。ここは、別途きちんと手続きを踏む必要がある。

結婚の届け出と、在留資格。この二つが、別々に存在している。言われてみれば当たり前なのに、調べるまで、私はそれをひとつながりだと思い込んでいた。知らないというのは、こういうことだ。


そして、案内した

調べて、整理して、社員に噛み砕いて伝えた。結婚の届け出には、お相手の国の証明書が要ること。それが国によって違うから、まずは届け出る予定の市区町村の窓口に確認するのが確実なこと。そして、結婚と在留資格は別の手続きで、後者は専門の窓口や専門家に相談したほうがいいこと。

きちんと案内できたときには、正直、ほっとした。

念のため、はっきり書いておく。外国の方との結婚の手続きは、お相手の国や状況によって、本当にさまざまだ。この記事は、あくまで私が一つの案件を通して調べた範囲の体験談にすぎない。実際に手続きをする方は、必ず、市区町村の戸籍窓口や、出入国在留管理庁、そして必要なら行政書士・弁護士といった専門家に確認してほしい。ここは、声を大にして言っておく。

正確なところは、公式の案内が確実だ。

法務省:国際結婚、海外での出生等に関する戸籍Q&A
出入国在留管理庁:在留資格「日本人の配偶者等」


一難去って、また一難

これで一段落。そう思った矢先、社員がこう続けた。

「あ、それと。妻は、そのうち退職する予定なんです。そうなったら、保険とかどうなるのか、それも教えてもらえますか」

……一難去って、また一難。

それにしても、この社員、用意周到だ。結婚の手続きの段階で、もう奥さんの退職後のことまで考えている。先回りして準備するタイプらしい。感心する。退職して、夫の扶養に入る。これはこれで、また別の手続きだ。しかも、お相手は外国の方。私は再び、静かに冷や汗をかきながら、次の調べものに取りかかることになった。


人生の節目が、手続きになって、やってくる

結婚、家族が増えること、そして退職。人生の大きな出来事は、管理部門の窓口では、ぜんぶ「手続き」という形になって現れる。

淡々と書類をさばいているように見えて、その一枚一枚の向こうには、誰かの人生の節目がある。マッチングアプリで出会って、国境を越えて結ばれた、二人の門出がある。そう思うと、冷や汗をかきながらの調べものも、悪くないなと思えてくる。

さて。その「奥さんが退職したとき」の話。これが、なかなか奥が深かった。その話は、次回にしようと思う。

「総務・労務・経理で悩むあなたに、現場から届けます。」

次はこの話をするね
「妻が退職するんです」外国籍の配偶者を扶養に入れた話〜資格確認書という近道〜

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